『公益法人の税金は本当に安くなるの?』
2012年11月02日

公益総研株式会社 首席研究員兼CEO
公益財団法人公益推進協会 代表理事  福島 達也

 

公益法人と一般法人への移行申請もいよいよ最終局面、最後の1年だ。平成251130日までに申請書を出さないと自動的に解散になるのだから、まだ申請していない法人はさぞ大変だろう。

さて、そんな以降の選択の重要な決め手になるのはやはり税金のことだろう。一般法人の場合は、今までの公益法人とほぼ同じような税金がかかることになるのだが、税率が上がる分だけほぼすべての一般法人は増税になる。

一方、公益移行組は、勝ち組と負け組に分かれる。

今まで法人税の対象だった事業が公益目的事業に認められると、課税から一気に非課税になり、何百万も何千万円も納めていた法人税がなんとゼロになってしまうのだから、笑いが止まらないだろう。ただし、収支がプラスの場合は、それを使う計画を立てないといけないが、それでもお得なことは間違いない。だって、今までは税金を払い終わってから、残りのお金で、何か購入することが基本だっただろうが、今度は、税金を払う前に、すべての剰余金を使えるのだ。

私の知っている公益法人は、毎年約3000万円の法人税を払っていたが、公益法人に移行してからは、その3000万円で事業に使う電算システムの入れ替えができると喜んでいた。まさに、笑いが止まらないという感じだった。事業用の車をすべて新車に変えた公益法人もある。何ともうらやましい・・・。

しかし、負け組と言ったら申し訳ないが、公益法人に移行しても増税になる法人もあるのだ。それは、今までの収益事業が公益目的事業に認められなかった法人だ。その場合は今まで通り法人税がかかるだけでなく、税率も上がるので、結局増税ということになる。

片方では、毎年新車や新型機器に入れ替えている公益法人と、毎年爪に灯をともしながら暮らしていく公益法人。本当にこういう制度でよかったのか・・・。新政権がこういうところに気が付くのも時間の問題だろう・・・。

それと、法人住民税も忘れてはいけない。

こちらは法人税と全く別の扱いだ。収益事業をしているかしていないかが決め手となる。していなければ、毎年4月に減免申請書を提出して、均等割の7万円を免除してもらうのだが、収益事業をしていれば公益法人であっても免除は無し。さらに、4月に毎年提出しないと免除は無しだ。

NPO法人の場合は、一度免除されると、継続して免除されるため毎年申請しなくてよいのだが、公益法人にはかなり冷たい。4月の申請を忘れると免除してくれないのだ。

だから、公益法人の経理担当者はよく覚えておいてほしい。4月を忘れてはいけない。

また、一般法人の場合はどうかというと、非営利型であっても法人住民税の均等割の免除はないから、ここでも、公益法人と差がついてしまう。

一般法人の中には公益事業しかしていない法人もたくさんあるのに、何とも冷たい制度だ。

税金の有無で移行先を決めるのはおかしいが、こう差がつくと、やはり考えてしまうだろう。



 

公益総研株式会社 非営利法人総合研究所

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